2008年12月10日

【新聞記事】手術への同意も成年後見人の仕事?


今後大きくクローズアップされてきそうな問題です。認知症などで本人に判断能力がなくなったとき、財産行為については成年後見人制度が確立されていますが、侵襲的医療については、まだ手つかずに等しい。


(下)同意の権限なく 困惑する後見人(YOMIURI ONLINE)

認知症の人は、手術を受けるかどうかを聞かれても、自分で判断するのが難しい。独居で身寄りがなく、本人の代わりに判断してくれる人がいないため、医療者や成年後見人らが困り果てる事例が目立っている。(猪熊律子、写真も)

生死を分ける判断

「医療行為の判断には、病状だけでなく、その人の生活環境も重要です」と話す小川さん(都内の介護施設で) 「人工肛門をつけますか、どうしますかと病院から聞かれた時は困りました」と話すのは、後見人として活動する社会福祉士の小川久美子さん。2年前、担当していた70歳代の女性が高熱を出し、入院した時のことだ。

 がんの転移がもとで腸壁が崩れ、尿路感染を繰り返すようになったため、人工肛門をつけるかどうかという問い合わせだった。女性は認知症で、独身のうえ親もきょうだいもない。だが、後見人には医療行為の同意権がない。

 このため、小川さんと、主治医、女性が入居していた有料老人ホームの職員で対応を協議。この結果、人工肛門をつけても尿路感染が完全に防げるとは限らないこと、生活の質の改善が見込まれないことなどから、手術は見送られた。

 「後見人に同意権はないが、実際には、予防注射から大手術まで、様々な医療判断が求められ、生死を分けるような判断を委ねられることもある。早く法的な整理をしてほしい」と小川さんは訴える。

制度施行時も議論

 医療行為の同意権をめぐっては、2000年に成年後見制度が施行される過程でも議論された。だが、家族も含め、本人に能力がない場合の意思決定を誰がするのかの本格議論がない段階で、後見人にだけその権限を認めるのは時期尚早だと、導入は先送りされた。

 現行制度では、後見人は、入院手続きなど医療契約の代理はできても、手術や輸血など医療行為の同意権はないとされる。生命にかかわる緊急時には、医師は同意なしに手術を行えるが、そうでない場合は、訴訟リスクもあるだけに、家族や後見人らに同意を求めているのが一般的だ。

 日本成年後見法学会が昨年秋、後見人を対象に行った調査(有効回答約600人)では、後見人の約4割が、医療同意の経験があると回答。また、「活動する上で感じた困難さ」については、約3割が「医療同意を求められる」を挙げた。ただし、その具体策となると、「軽微な医療行為なら同意権を認めるべきだ」「利害が相反する可能性もある後見人に同意権を与えるべきではない」など、意見が分かれているのが現状だ。

財産行為についての代理人と医療についての代理人は、一応別の制度にした方がいいんじゃないでしょうか。成年後見人にすべてを任せるのは、荷が重すぎる気がします。結果的に同一人物が務めるケースがあっても構いませんが。

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この記事へのコメント

1. Posted by 山本 雅昭   2008年12月14日 16:36
はじめまして。貴HPにであい、コメントいたします。
私は、成年後見制度のもとで京阪神奈良地区で活動いたしております「NPO法人(法人後見人)」の設立代表者で、専務理事をつとめております。NPO法人を設立し、9年目になります。当初から、「任意後見契約」に併せ「医療契約締結等に関する委任契約」を公正証書で行っています。医師からインフォームドコンセントにおいて、ご本人と同席するとともに、検査、手術、治療等における同意者にもなり、「医療行為事前指示書」により、ご本人のリビングウィルの表明と判断能力が不十分になった際(任意後見受任段階)に代理人として、活動することになります。成年後見受任、特に任意後見受任での医療分野での後見人として、支援できる態勢をめざしている次第です。

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