2014年03月20日

【新聞記事】「おひとりさま」の勧めは無責任


今後の日本で、議論の的になりそうなテーマの一つです。


今や時の人となった感のある上野千鶴子氏への異論。論者が八木秀次・高崎経大教授、掲載紙が産経新聞の「正論」欄ということで、読む気を無くしてしまう方もいるかもしれませんが・・・。
上野氏は、性をめぐる過去の発言などが問題にされたことについて、「ひとりでも最期まで在宅で」という、「講演のテーマに無関係」だと反論したが、講演のテーマ自体にも問題がありそうだ。

テーマは、同氏の著書『おひとりさまの老後』(法研、平成19年)の内容を踏まえている。同書は、「女性に向けて『男いらずで生きていける』というメッセージを送っているんだから、あれは本当は危険な本なんです」(Voice 22年9月号)と、氏自らが述べているものだ。

内容をまとめると、結婚していても子供がいても離婚しても生涯独身でも、長生きすれば、みんな「おひとりさま」になる。最期はみんな同じ「おひとりさま」。離婚も生涯独身もそれぞれハッピーで決して不幸ではない。

要するに、最期はみんな「おひとりさま」だから、結婚しなくていい、子供も産まなくていい、離婚も怖くないという主張である。同時に、最期まで子供など頼らずに、「おひとりさま」で在宅し続けることの勧めでもある。
現実として、「おひとりさま」は増えていますしこれからも増え続けると見込まれます。積極的にか消極的にかはともかく、これを肯定してそれにふさわしい社会システムをつくっていくのか。それとも、食い止め逆転させるためにいろんな手を打つのか。「国論二分」と言ってもいいくらいの大論争のテーマになりえますね、これは。

たださすがに、後段に書かれた八木氏の提言に賛同する向きは、あまり多くないのではないでしょうか。

高齢者の「おひとりさま」化を煽(あお)るのではなく、近居の親子を一単位の家族と見なして税制上の優遇措置をとることや、所得税の課税対象を所得稼働者個人単位から家族単位に転換させるといった「家族の絆」を強める具体策(安宅川佳之著『家族と福祉の社会経済学』参照)が不可欠である。

生前準備の分野では、おひとりさまの増加は「現実」なので、それに対応した受け皿や仕組みが求められるのは言うまでもありません。現実を良いとか悪いとか言っても仕方ありませんから。

ただ、おひとりさまに対応する一方でおひとりさまから抜け出す道も世の中につくっていく必要があると思っています。とはいえ、税制や法律などで特定のライフスタイルを「押しつける」ような感じになるのは、各所から反発が出すぎて結局もたないのではないでしょうか。あくまで、望む人が簡単に手に入れられる、という程度で良いのではないかと。

なお、同じ「おひとりさま」でも女性と男性では様相がかなり異なります。男おひとりさまの場合、孤独死・無縁死のリスクが高いのは事実で、おひとりさまの増加は孤独死増加に直結するおそれが強いんですよね。今のままだと。 


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